お客様事例

Mobile Tyre Shop

業務の刷新にローコード開発ツールは欠かせない――成長し続けるオーストラリアのスタートアップ企業

業種

小売

概要

Claris パートナーと協力し、特定業務から小さく始めて大きく育てるアジャイル開発でカスタム App を構築。最終的に ERP システムへ。

導入成果

全部門にわたる業務を 1 つずつ、たちどころに刷新。業務負荷の削減、顧客満足度の向上、ビジネス拡大、プラスの ROI(費用対効果)を実現。

  • 売上が 2 倍 に増加
  • 4,000 件の五つ星レビュー
  • 車両を 50% 増加
  • 業務プロセスを 50% 削減

オーストラリアのタイヤ交換業界で初めて、これまでになかったビジネスモデルを始めた Mobile Tyre Shop 社は車のタイヤ交換のプロセスをとても快適なものにした。

Mobile Tyre Shop の Web サイトではタイヤを検索して比較・検討しながら購入でき、購入したタイヤを自宅や職場で出張交換してもらえる。専門のエンジニアが客先まで訪問してタイヤを交換してくれるので、タイヤ交換にまつわる手間がなくなったのだ。

Mobile Tyre Shop 社はこのビジネスを拡大するために当初、高価な ERP システムの導入を図っていたが、事業変化に迅速に適応しイノベーションを求める同社にとって、その ERP システムは足かせになってしまっていた。既製の ERP プラットフォームで失敗した Mobile Tyre Shop 社は、その後、ERPシステムの再構築でDXを推進するべく、Claris FileMaker を選択した。

「既製品の ERP システムで事足りるようなビジネス」ではない

そもそも、車のタイヤ交換は「しぶしぶする買い物」と Mobile Tyre Shop 社の CEO、トラビス・オズボーン氏は語る。不便なもの、よくわからないものに満ちたプロセスが多いからだという。

「タイヤの価格は透明性がなく、選択できるタイヤの種類は限られています」とオズボーン CEO。「油まみれの作業場でタイヤ交換を待つのは煩わしく、また自分の車に何をされているのかもわかりません」と続ける。

2012 年に Mobile Tyre Shop 社を設立した時、オズボーン CEO はこのような問題を解決したいと考えていた。同社は ―― この種の企業ではオーストラリア国内初なのであるが ―― エンジニアを顧客の自宅や職場に直接向かわせてタイヤを交換している。

同社のビジネスモデルはオーストラリア国民に支持され、最初の数年間でオズボーン CEO が「Shark Tank」(ビジネス・投資がテーマのアメリカのリアリティ番組)への出演オファーを受けるほど急成長した。その一方、顧客訪問スケジュールは手動で作成していたため、労働時間も長く、拡張性もなかった。そこで同社 COO のジェイミー・カートライト氏は、ERP パッケージシステムの導入を決断。システム導入に 2 年という膨大なコストと時間を費やした。新 ERP システムの運用開始までの期間、基本的にあらゆるイノベーションを保留にしていたという。しかしようやくシステムが導入された時、その ERP は同社が望んでいたように機能しなかった。

カートライト氏は、「その ERP システムに落ち度があったのではありません。導入した ERP は、あくまで汎用 ERP だったのです。それはつまり、当社は汎用 ERP で事足りるようなビジネスをしていない、と認識できていなかったことが問題だったのです。当社のビジネスに適合して、そのまますぐに使用できるような汎用 ERP は存在しなかったのです。新 ERP 導入時の混乱で、その月は売上が約 250,000 ドル = 2375 万円(1AUD = 95 円)減少しました」と振り返る。

結局、導入した汎用 ERP は柔軟性に欠け、Mobile Tyre Shop 社のビジネスモデルの中核をなす創造性に富んだ業務プロセスを阻害していると判断され、代替案の検討が始まった。Mobile Tyre Shop 社に必要なのは、汎用 ERP ではなく、カスタムERP の導入であると改めてカートライト氏は認識した。

Claris FileMaker による カスタム ERP 導入に挑戦

その時カートライト氏の脳裏に、自身が 40 年近く前にミュージシャンとして活躍していた頃に使用していたローコード開発プラットフォーム、Claris FileMaker のことがよぎったという。その昔、カートライト氏はアーティストのデータベース作成、ライブ会場リストの整理、経営する芸能事務所とミュージシャンの契約書の作成を行うためのカスタム App を FileMaker で構築して利用していた。

カートライト氏は FileMaker なら Mobile Tyre Shop 社が求めるカスタム ERP の構築ができるかもしれないと思い、十分な調査が必要だとも考えた。そこでカートライト氏はインターネットで Claris について調べ、ローコード開発プラットフォーム Claris FileMaker の機能を精査する。そして Claris に連絡し Claris FileMaker が Mobile Tyre Shop 社のニーズを満たし期待に応えるプラットフォームだと確信した。

Claris の社員は、今後の疑問点の解消やプロジェクトのスコープ(適用範囲)に関して相談できるよう、Claris パートナーの Digital Fusion 社にも支援を求めた。そして、ERP の刷新について、カートライト氏は オズボーン CEO に提案した。

以前の ERP システムの失敗で高い代償を払ったため、当然のことながらオズボーン CEO は慎重だった。カートライト氏が FileMaker では小さなものから始めて徐々に規模を拡大し、その価値を証明するという方針であることを伝えると、オズボーン CEO は同意した。

「正直に言うと、当時は本当に想定通りのことができるかどうか懐疑的でした。当社はすでに多額のコストを汎用 ERP システムに費やしていて、その結果は散々なものでした。カートライト氏の FileMaker を使った刷新案は、段階的に目的を達成していくという内容で、当社のビジネスにとって最適な解決方法になると感じました」とオズボーン CEO は当時を振り返る。

FileMaker を活用した最初の数プロジェクトが成功

カートライト氏は FileMaker の価値を証明するには早めにいくつかの成果を上げる必要があると認識し、戦略的にアプリ構築に挑んだ。

Digital Fusion 社と協力して取り組んだ最初のプロジェクトは FileMaker を Web サイトと統合することだった。

汎用 ERP システムでは、Mobile Tyre Shop 社では各タイヤメーカーとタイヤ製品に関するデータを自社のオンラインストアに手動入力していた。FileMaker と統合後は、データは Web サイトに自動で反映されるようにした。

「これは ROI の妥当性を CEO に示し、さらに費用をかける許可を得るための第一歩でした。Excel スプレッドシートを使わなくて済むよう、Web インターフェース上で作業できるようにしたかったのです」とカートライト氏は語る。

最初のプロジェクトはシンプルで比較的小さな成果だったが、オズボーン CEO には好印象を与えた。

「最適なソリューションを手に入れたと理解した日のことをよく覚えています。FileMaker は、ビジネスに大きな安心をもたらすもので、他の業務に集中することができるようになりました」とオズボーン CEO は語る。

E コマースのプラットフォームにデータを送るという非常に基本的なところから始まった私たちと FileMaker との関係は、素晴らしい冒険です

— Mobile Tyre Shop 社 CEO 兼 創設者トラビス・オズボーン氏

これをきっかけにオズボーン CEO は、FileMaker のファンになった。

カートライト氏と Digital Fusion 社のチームが Web サイトのアジャイル開発サイクルの途中であった時のことだ。「オズボーン CEO は、『コールセンターにも FileMaker が必要だ。どうすればコールセンターでこの Web サイトにアクセスできるのか』と聞きました」と カートライト氏は振り返る。

「そこでコールセンター向けに専用の見積書作成システムをリリースしました。コールセンターにとってお客様の見積もりを “すぐに” 作成できることは、これまでにない画期的なシステムでした」

これらの最初のいくつかのプロジェクトが、Mobile Tyre Shop 社と FileMaker が 3 年契約をコミットする関係になるきっかけとなる。

段階的に構築されたカスタムオペレーティングシステム

最初の成功に後押しされて、カートライト氏は次々にさまざまな業務を FileMaker に統合し、追加したソリューションを 1 つの包括的なワークプレイスオペレーティングシステムへと変えていった。

Mobile Tyre Shop 社は業務のさまざまな面を FileMaker で自動化し、最適化した:

  • Google アナリティクスのデータをコールセンターに統合:潜在顧客が Mobile Tyre Shop 社に電話するとすぐに、固有の Google シリアル番号 (Google クリック ID (GCID) と呼ばれる) が Mobile Tyre Shop 社のシステムにインポートされる。そして顧客が購入すると、このデータは Google アナリティクスに送り返され、類似したオーディエンスをターゲットにキャンペーンを最適化する。
  • 作業ルートを最適化:FileMaker 導入以前、チームのスケジューラは、仕事間の移動時間を計算しやすいように、端数を切り上げていた。例えば、20 分間の移動を 30 分に切り上げる、といったもの。ルートの最適化を FileMaker カスタム App に統合することで、作業員は 1 件 あたり約 10 分間、 1 日で 1 時間近くの時間を節約できるように。その結果、追加のコストをかけずに 1 日あたり、車両 1 台分の作業を増やせるようになった。
  • 予約をセルフスケジューリングするための顧客ポータルを構築:顧客はスマートフォンから、FileMaker で用意された Web ブラウザにアクセスして、自分自身で予約やスケジュール変更を行えるように。
  • オンラインストアと eBay を統合:FileMaker でオンラインストアと eBay を統合。これにより顧客は Mobile Tyre Shop 社のオンラインストアを通じて eBay からタイヤを購入できるようになった。購入データは自動的に Mobile Tyre Shop 社のシステムに反映される。
  • 社内のライブチャットのメッセージングシステムを構築:チームは顧客とのコミュニケーションを記録して顧客データを収集する方法を必要としていた。そこで特定の顧客に関する社内のやり取りをそれぞれのファイルに自動的に保存するライブチャットシステムを開発。
  • 現場の技術者向けのカスタム App を開発:FileMaker Go を活用することで 作業員は iPhone や iPad で予約の日時と場所、仕事 1 件ごとに必要なタイヤの種類、顧客とのコミュニケーション、次の予約までのルートを確認できる。
  • タイヤの在庫を記録するバーコードシステムを開発:FileMaker で在庫を管理し、各工程の入出庫でタイヤをスキャンする。作業員は適切なタイヤ在庫を把握することができる。
  • SMS と E メールによる顧客とのコミュニケーションを自動化:すべての顧客は、予約の確認から作業の完了までプロセス全体にわたり E メールと SMS が受信可能。これは同社のカスタマサービスの重要な役割を担っている。
  • 顧客とのコミュニケーションに ChatGPT を統合:Claris FileMaker の最も革新的な使い方の 1 つは、顧客とのコミュニケーションに AI を統合したことだ。ChatGPT を活用することで、エンジニアから送信されるすべての SMS がプロフェッショナルな文章であることがわかり、顧客体験全体を向上させる。さらに、自動化された E メールと SMS は、プロセスのあらゆる段階で顧客に情報を提供し、顧客満足度を大幅に向上させた。
  • ビジネスデータを可視化するダッシュボードを構築:FileMaker でビジネス全体と社内の状況を反映できるグローバルダッシュボードを構築。「チームが忙しい時期をダッシュボードで把握できるようになり、チームメンバーの予定が遅れていることを確認しサポートできます。FileMaker のおかげでこのようなサポートできる組織体制が会社の文化となりました」とカートライト氏は絶賛。
  • 採用と研修のプロセスを最適化する HR モジュールを構築:Mobile Tyre Shop 社におけるスタッフの採用と研修の方法を最適化し、会社の従業員にポリシーと手順を通知する。
  • OCR の導入により請求書作成システムを自動化:経理事務担当に OCR を導入することで、注文に対しての請求書発行を自動化。「効率性が大幅に向上しました」とカートライト氏は述べる。

FileMaker を使って 1 つずつ継続的にビジネスを改善していくというカートライト氏の戦略により、Mobile Tyre Shop は本当に必要なカスタムERP システムを稼働するに至った。

「段階的に改良を加え、テストしてそこから学び、新しいビジネス分野で改善を繰り返すという考え方。これが FileMaker が当社にとって最適なソリューションであると言えるゆえんです。開発者と 1 対 1 で作業し、アイデアやプロジェクトを少しずつ実現し改善していくことができるので、より効率的になり、ビジネスの拡張性も高まります」とカートライト氏。

「現在では、Mobile Tyre Shop 社の業務全体が Claris FileMaker で運用されています。FileMaker が当社のビジネスに与えた影響は計り知れません。まさに当社の成長を可能にするバックボーン、データ、および情報を提供してくれました」とオズボーン氏は声を弾ませる。

「FileMaker との冒険は驚くべきものでした」

Mobile Tyre Shop 社と Digital Fusion 社のチームは 現在 Claris プラットフォーム全体を吟味している。例えば、Claris Studio を顧客のセルフスケジュールポータルで使用する方法を検討している。さらに、カートライト氏は、FileMaker を使用して新たな AI 連携を含む最新のテクノロジーをテストすることも目論む。

「Claris は当社に価値をもたらすテクノロジーで AI の最前線に立てるかもしれません。スクリーンに表示されるプロンプトに、ランダムに何かを入力し、データから回答を得たりできるようになるのが楽しみです」とカートライト氏は Claris プラットフォームの将来に期待する。

FileMaker は Mobile Tyre Shop 社のERPシステムを刷新しただけでなくカートライト氏の役割も変えた。

「私たちが直面する課題を解決するため、どこにリソースを集中すべきかを指示することが現在の私の役割です。業務効率化を図りビジネスの投資対効果を最大化するために、FileMaker を活用して次に何をするべきかを検討しています。

ビジネスも人生も FileMaker によってどこに導かれるかは決してわからない。これまでの FileMaker との冒険は私にとって驚くべきものでした。ベンチャービジネスをサポートする小さなツールのようなものから導入が始まって、今日の Mobile Tyre Shop 社の新 ERP システムに拡張しています。本当に驚くばかりです」とカートライト氏。

効率化を実現して継続的なビジネス成果を上げる方法をご覧ください

カートライト氏が「Claris FileMaker は Mobile Tyre Shop 社に必要な開発プラットフォームではないか」と考えた時、彼は Claris社 の営業担当者に連絡を取ってアドバイスを求め、Claris パートナーを紹介されました。みなさんも同じように成果を上げることができます。

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