静波サーフスタジアムはサーファーのパラダイス
静波海岸(静岡県牧之原市)は温暖な気候かつ遠浅で波が静か、そして景観の良い白い砂浜という特徴から、夏期には県内外から多くの海水浴客が訪れる人気の観光スポットだ。サーファーからの知名度も高く、年間およそ60 万人のサーファーがこの地を訪れる日本有数のサーフスポットとなっている。
この静波海岸からわずか 60m の場所に、大型人工サーフィン施設「静波サーフスタジアム(Perfect Swell Shizunami)」が誕生した。世界でもっとも有名な造波メーカー、American Wave Machines, Inc. (カリフォルニア州、以下 AWM) の造波装置「PerfectSwell®」 を日本で初めて採用し、多種多様な波を作り出すことが可能で、他では実現できない素晴らしい波を再現している。
特に遠方から静波海岸に来たサーファーにとって、静波海岸のコンディションが悪い時や、波が穏やかな日中の時間帯であっても、1 時間に 10 本、自分の乗りたい波に乗ることのできる静波サーフスタジアムは、最高の時間的価値をもたらす。また初心者にも最適で、安全に小さい波から、自分だけの波を占有して練習することができる。
入場から買い物まで財布を持たずに水着のまま利用可能
静波サーフスタジアムの利用者を喜ばせるのは AWM が作り出す波だけではない。
「水着のまま、手ぶらで場内を歩き、そしてビールを楽しめる世界にしたい」
静波サーフスタジアムのこの想いをソフトウェアで支えるのは、Claris Internatinal Inc. (米国カリフォルニア州)のローコード開発プラットフォーム Claris FileMaker だ。予約、来場受付、精算など基幹システムとして稼働し、利用者の利便性向上に大きな役割を果たしている。
利用者はまず、Web サイトから会員登録とクレジットカードの登録を行う。予約が完了すると、施設利用のための QR コードが生成され、来場者は当日入り口で QR コードを提示する。受付のスタッフが iPod touch でQRコードを読み取ると、チェックインは完了となる。来場者は、防水紙で作られたリストバンドを受け取り、腕に装着する。これが入場のドアを開けるキーにもなり、同時に、場内の物品購入や飲食などの決済にも利用でき、最後にチェックアウトすれば QR コードは無効になる。リストバンド一つあれば、何も持たずに場内で快適に過ごせる仕組みになっている。
仕様書よりも動くソフトウェアを
施設の完成前からシステムを企画し、オープン前までに予約、来場受付、精算など基幹システムとして稼働させるには、状況や環境の変化にも耐え得る最新の IT 技術で、カスタマイズ性(柔軟性)とアジャイル性(敏捷性)の高さが重要だった、とサーフスタジアムジャパン株式会社 代表取締役 安達 俊彦氏は語る。
「財布もなければバッグも持たない。水着とサーフボードだけで、波はいっぱいあって買い物もできる。入った途端に世界が違うという非日常がなければいけない」
このシステムコンセプトを企画立案を担当したのはサーフボードの販売を手掛ける株式会社ジャックオーシャンスポーツ 取締役 で 静波サーフスタジアム アドバイザーでもある 井部 憲良氏。井部氏は、新しい施設のシステムに 100% 完成はない、要望や運用の変化に対してどうしても変更は必要になる、とはじめから想定していたという。
コンセプトを理解した上でシステム開発に取り組んだのは、地元静岡を拠点とする Claris 認定パートナー ネビュラ株式會社の代表取締役であり、アプリ開発者であり、また自身サーファーでもある松本 健吾氏だ。
今回のプロジェクトの導入コンセプトに共感した松本氏は
「仕様書よりも動くソフトウェアを現場は必要としていました。システムを使いながら要望が増えていき改良を続けながらシステムを一緒に成長させています。例えば、当初はレンタルボードという要件はありませんでしたが、途中から仕様変更して機能追加されています。Claris FileMaker はそうした柔軟な対応が得意で、どんどん拡張できます」とローコード開発によるシステム導入のメリットを語る。
安全安心な身近なスポーツとしてのサーフィンの普及へ
日本初上陸の造波装置「PerfectSwell®」とサーファーならではの視点をふまえて構築された IT システムを兼ね備えた同施設の運営を担う安達氏は、
「静波サーフスタジアムは、2021 年の東京オリンピックでアメリカ代表と日本代表の事前合宿所にも選ばれるほど、最高のサーフィンをいつでも体験できる世界レベルのサーフスタジアムです。世界を代表するアスリートや、サーフィンを日常的に楽しんでいる方はもちろん、一度サーフィンを中断した方、シニアそして小さいお子様などにもぜひサーフィンの楽しさを実感していただきたい。サーファーが集まるこの地で、さらにサーフィン人口を増やしていきたい」と今後の抱負を語る。
社会福祉の仕事もしている井部氏は、
「障がい者の方々に向けた アダプティブサーフィン というものがあり、世界選手権も開催されています。静波サーフスタジアムであれば、安全かつ監視員がいる中でチャレンジできるので、そういった方々の練習にも利用していただきたい」と語る。
開業以来システムを担当する松本氏は、
「Claris FileMaker には予約時の波の嗜好や来店頻度、スタンス(ボードに立つ際にどちらの足が前にくるか)などの細かな顧客データを蓄積しています。これらのデータ分析を運営に活かすこともでき、マーケティング分野での活用も見込んでいます」と さらなるシステムの進化を目指す。