システムに業務を合わせる』のではなく『業務にシステムを合わせる』のは FileMaker にしかできないことで、他を圧倒していると思います。 会員数は右肩上がりに増え続け、事業も順調に継続し、ビジネスは成長しています。この成功は FileMaker なしにはありませんでした。
使いやすさとプラットフォームの継続性への信頼により導入を決定
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会は、1966 年に発足したピアノを中心とする音楽指導者の団体である。発足以来会員数は増え続け、現在は 16,000 人以上の会員が所属している。
同協会で FileMaker を使い始めたのは、1992 年だった。その時期のことを専務理事の福田成康氏はこう振り返る。「データベースの選択は大きな経営判断です。『ずっと使い続けられるプラットフォーム』を選ばなくてはならないと考えていました。様々なデータベースシステムやデータ管理ツールを調査し、試用しましたが、FileMaker の使いやすさは群を抜いていました。また、バージョンアップしてもデータをほぼそのまま移行できることは、FileMaker の大きな利点でした。渡米しての調査もした上で、FileMaker なら使い続けていけると判断しました」
20数年の歩みを経て、スタッフ全員がほぼすべての業務でFileMakerを使用
それから20年以上にわたって、FileMakerプラットフォームの業務システムは成長を続けてきた。福田氏は「FileMakerでこれができたらいいなと望んでいた機能がタイミング良く次バージョンに搭載されることが多く、このことからもFileMakerを選択した判断は正しかったと思います。反対に、追加された新機能から新たな用途が広がることもあります」と語る。
具体的には、「名刺やスケジュールは1996年からFileMakerで管理しています。1997年には情報管理系の業務はFileMakerにほぼ一本化し、2002年には基幹系システムもFileMakerに移行しました。その後も活用の幅を広げ、Webとの連携やグループウェア的な使い方など、現在はスタッフ全員がほぼすべての業務でFileMakerを使っています」(福田氏)とのことだ。2018年3月現在で使われているカスタム Appの規模は、190ファイル、1,500テーブル、11,000レイアウト、23,000スクリプト、10,500リレーションにものぼる。
外部サービスや IP 電話との連携、モバイルデバイスなど、多岐にわたって FileMaker を活用
全日本ピアノ指導者協会ではあらゆる業務に FileMaker のカスタム App を活用して効率と質を高めている。そのうちのいくつかを紹介しよう。
■主催コンクールのデータ管理
同協会では毎年、ピアノコンクールを主催している。複数の部門と級に分かれ、地区予選や書類選考から全国決勝大会やファイナルまで続く「世界でも最大規模のピアノコンクール」だという。このコンクールの参加者と実施地区、派遣する審査員、時間割のデータ管理に、カスタム App を使用している。時間割作成の自動化を例にとると、手作業では1地区あたり20〜30分かかっていたものが、5〜10 分でできるようになった。IT マネージャーの野口啓之氏は「今後は、派遣する審査員候補者を蓄積したデータをもとに自動で選考できるようなAI的な機能も作っていきたい」と言う。
■決済システムとの連携
イベント参加者からの参加費などがPayPalで決済された場合、PayPal の記録をカスタム App に読み込んで管理している。PayPal だけでなく銀行振込やクレジットカード決済の入金記録も同様にカスタム App で扱い、効率よく経理関連の処理、管理ができる。
■QR コードを活用したチケットシステム
Web からイベント参加申し込みを受け付けると、カスタム App から QR コード付きの確認メールを参加者に送信し、これがチケットとなる。イベント当日は、FileMaker Go とカスタム App をインストールした iPod touch のカメラで参加者の QR コードを読み取るだけで入場手続きが完了する。以前は紙のチケットを郵送していたため、その費用と時間が大幅に削減された。参加者にとってもチケットレスで手間がかからず、当日はスムーズに入場できる。実際に参加したかどうかが即座にデータ化されるので、参加者へのフォローアップも容易になった。
■電話システム(CTI)
IP電話の受発信をカスタム App で記録している。日時や通話相手が記録されるほか、自動で通話を録音して Google ドライブに保存し、カスタム App から該当する録音データにすぐアクセスできる仕組みも構築されている。
全員がカスタム Appを作成でき、常に改良を加えながら、業務に最適なシステムを開発
FileMaker のカスタム App はすべて内製化している。福田氏は「『システムに業務を合わせる』のではなく『業務にシステムを合わせる』のは FileMaker にしかできないことで、他を圧倒していると思います」と語る。内製化すれば業務にシステムを合わせやすく、しかもスピーディーかつ低コストで実現できる。
ところが同協会では、FileMaker のエキスパートを採用してきたわけではない。「組織内で人を育てる」方針と、互いに教えあい相談しあう組織の気風によって、FileMakerのカスタム Appは拡大、進化し続けている。野口氏のようにIT関連業務を多く担当している職員は数名いるが、カスタム App の開発や改善には全員が携わっているのだ。
その一人が本部事務局の板谷智織氏だ。主な担当はピアノ発表会開催に関する調整業務だが、カスタム App の作成にも自ら積極的に取り組み、担当業務の作業効率化を進めている。「最初に自分で手がけたのは、使っているファイルにメールのスクリプトを作成することでした。その後、データのエクスポートやインポートなど業務改善につながるように工夫しています」(板谷氏)。
安全のために制限をかけるより自由に改善できるほうが良い
板谷氏をはじめ職員の全員が、同協会で勤務するまでにFileMakerを使った経験はない。板谷氏は「業務の中で改善したい部分を見つけたら、既存のファイルから似たような機能を探し、組み合わせたりアレンジしたりすることがスキルの向上につながりました」と言う。もちろん、野口氏をはじめ周囲の先輩、熟練者に相談しながら問題を解決していくことも多い。
しかし、業務で使っているカスタム Appに各自が手を加えて、問題は起きないのだろうか。これについて野口氏は「全体の構造に関わるような特に重大な部分だけは制限をかけていますが、それ以外は無制限です。それでも、大きな問題が起きたことはありません。安全のために制限をかけるよりも自由に改善できるほうが、職員のモチベーションが上がり、業務が向上します」と語る。福田氏も「少しぐらいの失敗はOKと考えています。もし失敗があっても、バックアップからほぼ戻せるわけですから」と、この方針を推進している。
ワークショップやコミュニケーションの場を設け、情報収集や共有も積極的に
日常業務の中で工夫し、学ぶことに加え、「より良いシステム作りをみんなで推進していく足場を作り、底力をつけていきたい」(野口氏)という考えのもとに、参加者みんなで手を動かしながら一つのシステムを作り上げる「FileMakerワークショップ」を実践している。2017 年には 8 人の職員が 2 週間に 1 回集まって、FileMaker の仕組みだけでなく UX なども研究した。その成果が、iPad 上で動作するタイムカードのカスタム App だ。これにより勤務時間の集計業務が大幅に効率化された。交通機関の遅延があった場合には遅延証明書を iPad のカメラで撮影して提出できるなど、使い勝手が良く行き届いたカスタム App になっている。
ほかにも、「FileMaker カフェ」と名づけた気軽な相談会の時間を月に 1〜2 回程度設け、野口氏が職員からの質問や困っていることに答えている。全体のスキル向上とお互いに助け合うコミュニケーションの促進に役立つそうだ。ほかにも、YouTubeのFileMaker, Inc. 公式チャンネルで公開されている FileMaker Developer Conferenceのセッション録画が、新しい知識の習得に役に立っていると言う。日本で毎年開催されている「FileMakerカンファレンス」に参加したりといった情報収集にも熱心だ。板谷氏も2017年のFileMakerカンファレンスに参加し、発表された事例に大いに興味をひかれたとのことだった。
FileMakerは在宅勤務の支援にも有効、テレワーク先駆者として高い評価を受ける
同協会では在宅勤務も積極的に活用している。ピアノを習いたい人に教室を紹介する業務にあたる在宅スタッフがいるほか、育休や個人的な事情でも在宅勤務が認められている。在宅勤務でももちろん FileMaker のカスタム App を利用し、業務の効率化と情報の共有を図っている。前述の電話システムも、在宅スタッフが便利に、かつ安心して業務に臨むための重要なツールだ。
このような取り組みが高く評価され、2017 年度(平成 29 年度)には総務省の「テレワーク先駆者百選」に選出された。多様で柔軟な働き方を実現する上でも、FileMakerのカスタム App は大きな役割を果たしている。
全員が問題解決の意識を常に持って業務に取り組むことで生み出された高い生産性、FileMaker だからこそ実現できた柔軟な在宅勤務をいち早く取り入れた先進性。こうした業務改革は、「使い続けられるプラットフォーム」である FileMaker に支えられてきた。「会員数は右肩上がりに増え続け、事業も順調に継続し、ビジネスは成長しています。この成功は FileMaker なしにはありませんでした」と福田氏は力強く語ってくれた。
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会
所在地:東京都豊島区巣鴨1-15-1 宮田ビル3F
業種:ピアノを中心とする音楽指導者の団体
概要
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会は、ピアノ指導者を中心に16,000人以上の会員を有し、指導者の資質向上や音楽教育を通じた社会貢献のための活動をしている団体である。20年以上前からFileMakerを導入し、現在では会員情報、大規模な主催コンクールや各地で開催される発表会の運営、イベントのチケット、決済、経理から、Webとの連携や職員の勤怠管理、電話システム(CTI)、テレワークの支援に至るまで、協会内のほぼすべての業務にFileMakerのカスタム Appが活用されている。
導入メリット
- 20年以上にわたってFileMakerを使い続けてシステムを成長させ、業務の効率化やきめ細かいサービスの提供、スタッフの働きやすさを実現。
- 全職員がカスタム Appの作成や改善を手がける環境を作り、業務改革のモチベーションを高めて成果を上げている。
- 在宅勤務にも有効で、テレワークの先駆者としても評価を受けている。