めまぐるしくビジネス環境が変化するこの時代に生き残り、成長し続けられるのはどのような組織なのだろうか。株式会社カワムラモータースは、HONDA の新車ディーラーとして 2 店舗を経営するが、店長の肩書を持つ社員はいない。店長不在のこの組織は、どのようにして顧客満足と社員満足の両方を実現し、成長を続けているのだろうか。
導入を検討した際の課題
店長がいれば全ての陣頭指揮をとってくれる。
その安心感で社員は単なる作業員となってしまう。
株式会社カワムラモータースは HONDA の新車ディーラーとして、福井県内に 2 店舗を経営している。地方都市は少子高齢化が進み、新車販売ビジネスには厳しい状況だ。
これまでと同じやり方を続けていては成長を見込めないどころか、ビジネスを継続できない可能性もある。
そこで、経営方針を大きく転換。新しく車を買ってもらうだけでなく、お得意様に長期にわたり継続的に来店してもらえる自動車メンテナンスの事業を強化することにした。
何度も足を運んでもらうためには、お客様の満足度を高めることが不可欠だ。
しかし、当時店舗で行われていたのはマニュアル通り、かつ、待ちの姿勢の接客だった。
たとえば接客時に、「冬がくる前には、バッテリー交換をオススメいたします」といった一般的な案内はされるが、冬入り前のベストなタイミングで担当営業から個別に案内がされることはほとんどなかった。
店長がスタッフに指示を出すにしても、数が多い上に考慮すべき情報が複雑で、店長一人では扱いきれない。
スタッフはというと、店長の指示のもとに目の前にあることに取り組むのが仕事であり、顧客の情報を把握した上で主体的に接客するということはなかった。そもそも、顧客の情報が共有されておらず、お客様の状況を把握することもできなかったのだ。
これこそが、カワムラモータースが抱えていた大きな課題だった。
ソリューション
情報を可視化し、全スタッフで顧客情報を共有。
スタッフが自分で判断し、お客様にベストなサービス提供ができる環境を用意
店長がいることでスタッフの主体性がなくなるのであれば、店長不在の店舗にしよう。カワムラモータース は、大胆な経営革新を実行した。
店長の指示に従うのではなく、社員一人ひとりが自分で判断してサービスを提供するためには、判断材料が必要だ。
顧客の情報である。
接客を担当する社員、車のメンテナンスをする社員それぞれが持っている情報を集めて可視化し、全員で共有できるようにする。
情報があってはじめてスタッフが主体性を発揮できると考えたカワムラモータース社長の河村氏は、顧客情報と社内情報を全員が共有できるシステムを FileMaker で開発した。
顧客に関する情報は、営業担当だけでなく、技術スタッフをはじめ、誰でも入力や閲覧ができるようにした。
購入や点検の記録だけではなく、来店時のちょっとした相談や会話の内容もきめ細かく記録する。オイルやタイヤ交換の時期に影響する走行距離、家族構成、雑談から得た顧客プロフィールなど、様々な情報が蓄積されてくると、このお客様にはいつ何が必要なのかといった分析も可能になり、一歩先を行く提案ができるようになった。
自分よりも自分の車のことを把握し、タイムリーに行き届いた提案をしてくれるということで、顧客からの信頼も厚い。
店長不在だからこそ、判断に迷ったら情報と自分の頭を頼りにするしかない。情報共有の仕組みを整え、社員の主体性が発揮できる環境にすることで、全員経営の組織に生まれ変わることができた。
導入後の効果
社員が主体的に働けるようになり、やりがいアップ
情報をもとに社員が自分で判断して行動できるため、納得して仕事ができる満足感や、やりがいが向上した。
顧客と直接関わる機会が少ない業務でも、システムを通じて顧客がどのような方か知ることができ、満足いただける点検や整備をしたいという意欲が向上する社員が増えた。
社員同士がコミュニケーションを取り、管理者に依存しない強い組織に
全員が情報に関わることで、正確な情報をもとに社員同士で会話ができるようになった。
自分と違う立場の社員の状況もわかるため、お互いを思いやれるように。また情報共有と公開のおかげで、決定権を社員に委譲できるようになった。管理者に頼る必要もなくなり、組織として成長することができた。
顧客満足度がアップし、売り上げが増加
FileMakerをベースに作成されたシステムで情報を蓄積し、分析できるおかげで、タイムリーで行き届いた顧客対応ができるようになった。
さらに独自のサービス開発を実現。お客様からの信頼を得て、メンテナンス入庫量が増加した。
*この記事は、2017 年 9 月に公開したお客様事例をリライトしたものです。
2017 年 9 月に公開した 事例全文と、ビデオはこちらからご覧いただけます。
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