誰もが一度は口にしたことのあるお菓子のパッケージ。日々使っている日用品。それらが並ぶお店に飾られている POP や販促ツール。単なる印刷業ではなく、企業の商品への想いを形づくるダイワ光芸株式会社は 1957 年の創業以来、近畿圏を中心に 200 社以上の顧客からその確かな品質で愛され続けています。その裏側には Claris FileMaker プラットフォーム を活用して常に改善し続ける企業文化が存在していました。
システム開発の変遷について、ダイワ光芸の島田陽平さん、小笠原優里さん、Claris Platinum パートナーである株式会社バルーンヘルプの浜地直美社長にお話を聞きました。
” 見える化 ” から ” 見せる化 ” へ。
大阪に本社をかまえるダイワ光芸株式会社は、製版・印刷を中心に販促企画や、デザイン業務などを行い、特殊印刷や、企画段階から提案可能な企業として知られています。そんなダイワ光芸では、10 年前に大幅な業務システムの改修を実施。幾度となくアップデートを重ね、 2019 年に 3 回目の大幅なシステム改修を実施しました。
業務システムの大幅な開発は 2010 年から始まり、この 10 年で第 3 世代のシステムへとアップデートしています。 10 年前の開発担当であり、今回も引き続き開発担当を担った島田陽平さんは、当時の状況を次のように語ります。
「当時のシステムのキーワードは ” 見える化 “。制作現場の工程管理、制作伝票の発行から経理の請求書まで、業務の一連の流れを可視化していくことを目標に開発を進めました。第 2 世代のシステムができたことにより、仕事内容に応じた部署、担当者、時間、コストというのがすべて目に見えるようになりましたね。」
第 2 世代のシステムを順調に運用していた数年後の 2019 年、またアップデートをするために開発をスタートすることになったそう。なぜ、アップデートが必要になったのでしょうか。
「この 10 年でもさらに時代の変化は加速しています。業務の無人化や自動化が社会的に求められるようになり、変動が激しい印刷業界の中でも生き延びていけるよう、舵を切り、システム改修を進めることにしました。
今回の改修は ”見える化” から、”見せる化” をキーワードにしています。基本的な機能は引き継ぎながらも大きく変更した点は、システム側からプッシュ式で情報が開示される仕組みを構築しました。そうすることで、業務量の見せる化を実現させ、営業活動や制作現場の状況把握の改善にもつながっています。」
その考えは、システム名にも表れています。ビジュアライゼーションの「 VI 」、全スタッフが把握・確認できるように「パブリックビューイング」の P 、合わせて「 VIP 」と名付けられました。
業務や進行をすべて可視化し、適切な稼働を。
ダイワ光芸では、2020 年に FileMaker プラットフォーム上に構築された業務可視化ツール VIP システムの導入により、あらゆる方面の仕事の進め方が劇的に変化しました。
ダイワ光芸の仕事には、各作業単位での期日があります。その期日に遅延が発生しそうな場合には、VIP システムからアラートが出る仕組みになっており、全社に遅延発生リスクの周知がなされます。そのため、手遅れになる前にリスクを発見し、対応することが可能に。 1 つのジョブに対する目標所要時間を設定し、スタッフの抱えている案件数や、大まかな作業時間を可視化することで、目標時間とそれに対する実働時間がクリアになるので、会社全体として働き方の効率化につながっています。
ダイワ光芸におけるサービス単価は、スタッフの稼働時間に対して設定されいます。定時を過ぎたら単価が上がるようにも設定されており、変更依頼などで想定以上の稼働が発生した場合には、その時間を加算するシステムも構築されています。そのため、現場に立つ営業もこれまで以上に適正な価格をお客様に提示することができるようになったと言います。そして、このシステムの大きな目玉は、この進捗管理を 75 インチの大型ディスプレイでモニタリングできること。仕事量が開示されると同時に、多くのスタッフがひと目で現在の進捗を把握することが可能になっています。さらに経理総務部門では、この VIP システムや連携する RPA 、コミュニケーションツールを活用することによって業務の無人化、自動化を進めました。このような仕組みづくりをすることで、業務時間を大幅に削減したそうです。
「経理総務では VIP システム導入前に比べ、年間約 1000 時間分のコスト削減を実現しています。体感的にも大きく業務量が削減できていることは感じますね。空いた時間は、これまで手が回っていなかった営業のフォローアップを行っています。」(島田さん)
小笠原さんをはじめとする営業部門の方々も、社外でも大抵の業務が行えるようになったと話します。
「どこにいても、タブレットによって作業や社内スタッフに連絡ができるようになったので、営業部門でも業務の効率化が図れていると思います。」(小笠原さん)
長年の信頼がスムーズな開発につながった。
ここまでの大掛かりなシステム改修の裏には、ダイワ光芸と Claris Platinum パートナーである株式会社バルーンヘルプ(本社:大阪市)の長年に渡る信頼関係がありました。
「 10 年以上前から島田さんが開発に関わっているため、 FileMaker に関しても本当に熟知されています。今回 VIP システムを構築する際に最初にいただいた仕様書は、細かな要望も整理されており、開発を本業にしている当社から見ても本当に見事なものでした。そのため、こちらもとてもスムーズにお仕事させていただきました。」(バルーンヘルプ:浜地直美 社長)
「もしバルーンヘルプさんにお願いせず、ダイワ光芸だけで社内開発をしていたら、確実に今も開発中でしたね(笑)。私は他の業務と兼任してシステム構築に関わっているため、通常業務と並行だとスピードがどうしても遅くなってしまいます。その点、バルーンヘルプのエンジニアの方にご協力いただくと、スピーディーに共同開発ができます。また、我々の中にはない広い知見や、最新バージョンの機能や技術に関しても教えていただけるので、本当に助かっています。」(島田さん)
VIP システム を活用し、新天地で新しい挑戦。
「システムは 見た目には完成していますが、細かなアップデートは現在も続いています。第 1 世代、第 2 世代のシステムも運用開始から数年立ってようやく馴染んできたので、これからより実際の業務にフィットするように改善していくつもりです。例えば、製版データを実際に出力するシステムと VIP システム の連携開発を今は進めています。この連携が取れると、制作現場のワークフローも大きく変わり、さらなる効率化が図れると期待しています。現場の意見も取り入れながら、さらに VIP システム進化させて、お客様に対してより良いサービスをスピーディーに提供していけるようにしたいですね。いいものはどんどん柔軟に取り入れて、時代の変化に対応する。ダイワ光芸の強みを生かしてチャレンジしていきたいです。」(島田さん)
【編集後記】
長年大阪を拠点にし、 2019 年には東京にも進出したダイワ光芸。これから関東での別ジャンルの新しい事業化を目指しているそうです。 部門システムが稼働しながら新しいアプリが完成し、アプリ間連携しながら、機能が充実するのが、アジャイル開発とローコード開発の真骨頂。内製開発と外部委託開発のハイブリッド体制でスピーディーにシステムを進化させるダイワ光芸が関東で挑戦する新しい事業でもきっと最高の顧客サービスを提供してくれることでしょう。また、新規事業においても、今後さらに進化するであろう VIP システムをどのように活用されるのか、インタビューできることが楽しみです。