ローコード

ローコードの優位性とは?導入する企業と導入しない企業の間に生じる格差

ローコード開発とは?

「ローコード開発」は可能なかぎりソースコードを書かずに、アプリケーションを迅速に開発する手法、そしてその開発支援ツールのことを示します。

可能な限りソースコードを書かない開発手法

ローコード開発では「グラフィカル・ユーザー・インターフェース」(GUI) と呼ばれる視覚的な操作画面を用いて、画面部品やロジック部品を組み合わせて設定することでアプリケーションを開発します。これによって、従来のシステム開発と比較して、短い開発期間でユーザにテストを促し、現場のユーザから改善点をヒアリングしアプリケーションの改善を繰り返すサイクルを実行することで、安定した満足度の高いシステム開発を行うことが可能となるのです。

一般的なローコード開発では、ソースコードが必要な部分は最小限に留めて開発することになります。必要な部品の多くはあらかじめ用意されており、それを組み合わせてひとつのアプリケーションをつくり上げていく手法です。一般的にローコード開発として提供されている製品は、あらかじめ組み込まれた機能のみを利用するため機能の拡張性には限界があります。

限界のないローコード

Claris が提供するローコード開発プラットフォームは、誰もが学べ、すぐに使い始めることができる一方、外部のシステムやサービスとの API 連携や、アドオンの追加、JavaScript の活用、IoT 連携や機械学習(CoreML) など、高度な機能が標準で利用できるため、「限界のないローコード」として開発のプロフェッショナルからも支持されています。

Claris が提供するローコード開発プラットフォーム Claris FileMaker のJavaScript アドオン追加画面

速さと自動化、そして生産性の向上

「ローコード」のメリットは開発の速さと自動化による生産性の向上にあると言えます。なぜ開発サイクルの短縮と自動化が注目されているのでしょうか?

それは、近年テクノロジーの進化が加速し、将来を予測し難い世の中になっているからです。

例えば、最近では金融機関の通帳もデジタル化され、スマートフォンから送金ができます。旅行の予約や領収書の発行も昔のように店舗に行かず、すべてパソコンやスマートフォンでできるようになりました。一昔前まではこのような便利なものはなく、ここ 10 年でこれほどの変化が起こったのです。10 年前にこれほどの変化を予想できた人は少ないでしょう。このように、かつてないほど先行きの見えない、変化の激しい時代となっています。

変化の激しい時代に対応するには単にデジタル化を実現するだけでなく、DX (デジタルトランスフォーメーション) を加速する必要があります。IT を活用してビジネスモデルを変革しなければ、市場環境の変化についていけないからです。

現在は非 IT の業種においても DX が求められるようになっています。変化を続ける市場環境に対して、素早く対応できる柔軟な企業のみがこの時代に残っていけるといっても過言ではありません。

こうした風潮は、アプリケーション開発に対しても例外ではないのです。市場変化のスピードに負けない技術進化の基盤、開発速度や品質、セキュリティ基盤の構築など、あらゆる側面に新たな変革が求められています。速さと自動化、そして生産性の向上を求める中で、ローコード開発が注目されています。

ローコードにより加速する DX

速さと自動化、そして生産性の向上が期待できるローコードにより、現在では非 IT 企業であってもユーザ企業側にもアプリ開発の文化が生まれ、DX が促進されています。

そもそも「DX」とは、「デジタルトランスフォーメーション」の略称で「IT を用いてビジネスモデルや組織体制を変革し、市場環境の変化に対して柔軟な体制を作る」という考え方を示しています。

たとえばユーザ企業が自社で使うシステム構築を行うとします。これまではシステム開発会社に依頼し、打ち合わせを何回も実施しつつ運用開始までには、要件定義 → 詳細設計 → プログラム開発 → 単体テスト → 結合テスト → マニュアル作成 → 操作研修 などのプロセスがありました。仮に単体テストの段階でユーザ側で当初の想定と違う動きをした場合には、工程の手戻りと修正を繰り返しつつ、完成まで調整していくという過程を経るため、納期の遅延や追加費用が発生することにも繋がります。

この手法の問題は、お互いのビジネス領域の理解が乏しいことです。ユーザ企業はアプリ開発に疎く、システム開発会社はユーザ企業のビジネス領域に疎いため、要件定義で食い違いや見解の相違などが発生しやすく、それが後の工程における大きな手戻りや仕様変更の発生を誘発する傾向にありました。

これを防ぐため、システム開発会社の多くはエンジニアに専門分野を割り当て、同業他社のノウハウを新規受注先の新しいシステムに取り入れるなど、特定業種におけるベストプラクティスを共有する場合もあります。結果として大手システム開発会社による業務パッケージが生まれ、IT の主導権はユーザ企業からシステム開発会社に移行してしまう事態も発生しました。

しかし、ローコード開発ならばソースコードの記述は最小限の部分だけで済むので、工程を減らしユーザ企業だけですべてを完結させることもできます。システム開発会社に依頼する際にもユーザ企業自身である程度のプロトタイプを作れるので、要件定義における見解の相違が発生しにくいのです。つまり、手戻りや修正が減り時間も短縮が期待できます。ローコード開発によりDX が加速しているのです。

なぜローコード開発が注目されているのか

ここで、なぜ近年ローコード開発が注目されているのか、あらためて 2 つの視点から見ていきましょう。

1. 慢性的な人手不足

ローコード開発が注目されるのは慢性的な人手不足に背景の一端があります。IT 化や DX 化が進む中で IT人材は慢性的に不足しています。日本の企業には、諸外国と比較するとエンジニアが少ない傾向にあるからです。日本のエンジニアは、ほとんどがシステム開発会社に集中しています。これは労働法制や社会構造の影響によって、柔軟な組織が作りにくいことに原因があると考えられます。

日本の企業文化は、終身雇用と年功序列に見られるようなメンバーシップ型雇用が主流となっています。メンバーシップ型雇用にもメリットはありますが、アプリ開発とは相性が悪いのです。非 IT 企業が社内でスペシャリストを育てることは難しく、IT 専門のチームを構築しにくいからです。

ローコードツールとアジャイル開発によるシステム内製化は、このような日本特有の課題を解決するかもしれない技術として、大きく注目されています。

2. VUCA (変化の激しい時代)

ローコード開発が注目されるのは現代の時代背景にも要因があります。VUCA (ブーカ) とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty (不確実性)」「Complexity (複雑性)」「Ambiguity (曖昧性)」の頭文字を並べたもので、まさに今の時代を表しています。現代社会は、感染症拡大、IT の進化や国際情勢などで社会が目まぐるしく変化し、変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを持った時代です。

市場環境の変化やテクノロジーの進化が急激に進むようになっているのです。従来のような「ウォーターフォール型」の開発では開発スピードが遅く、変化に対応できない時代となっています。

現代は VUCA に対応するために高速でアジャイルな開発手法が求められており、ローコードはそれに対応できる手法として注目されているのです。

ローコードを導入する企業と導入しない企業の間に生じる格差

ここまでローコードがもたらす変革について解説してきましたが、ローコードを導入する企業と導入しない企業の間に生じる格差はどのようなものでしょうか。

最も懸念されるのは経済産業省が「DXレポート」で提示した「2025 年の崖」です。2025 年の崖では、経営面・人材面・技術面で次のような指摘がされています。

【経営面】

  • 既存システムが事業部門ごとに構築されて全社横断的なデータ活用ができなかったり、既存システムの問題でデータ活用できず、DX を実現できない状況に陥りデジタル競争の敗者になる。
  • レガシーシステムの維持管理費が高額化し、IT 予算の 9 割以上になる。
  • 保守運用の担い手不足で、サイバーセキュリティやシステムトラブルでデータ損失リスクが高まる。

【人材面】

  • 2025 年に IT 人材不足が約 43 万人まで拡大し、先端 IT 人材の供給不足に陥る。

【技術面】

  • 要件変更を前提とした対応ができるアジャイル開発への移行が進み、API / Web API ベースの疎結合構造により小規模サービス化が進むなか、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存するために、新しいビジネスを展開できなくなる。

これらの課題により発生する経済損失が 2025 年〜2030 年までに最大 12 兆円生じるとも予想されているのです。あえて過激な言い方をするならば、2025 年までに DX を推進し、変革を行わなかった企業は崖から落ちるという意味でもあります。

ローコード開発によって素早く DX を推進した企業と、 DX が遅れている企業では 2025 年以降、大きな生産性の格差が生まれるでしょう。先にも書いたように「変化に対応できた企業が生き残る時代」がもうそこまでやってきているのです。

従来のシステム開発と何が違うか

従来の「ウォーターフォール型」の開発では、システム開発会社に委託しプログラムのコードを仕様書に沿って書いていきます。これでは開発スピードが遅く、途中のビジネス環境の変化 (仕様変更) に弱いという大きな弱点があったのです。しかし、ローコードを導入することで、この弱点をカバーし、開発速度や開発コストを軽減できます。さらには AI 連携、マイクロサービスやクラウドを活用したアジャイルアプリケーション開発で拡張性の高い製品やサービスを提供でき信頼も高まるでしょう。今後、ローコードを中心とした高速なアジャイル開発がますます主流となるでしょう。

まとめ

日本の経営者にとって IT 投資は、未だに業務効率化・コスト削減を目的にしている「守りの IT 投資」意識が高い一方で、欧米では IT による製品やサービス開発 / IT を活用したビジネスモデルの変革を目指した「攻めの IT 投資」に軸足を移しています。

2025 年以後、これまでに体験したことのない市場環境の変化が起こる可能性があります。VUCA が示すように、現代は、変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを持った時代です。今後はビジネスモデルや組織体制を変革に対応できる手法を取り入れることが、今まで以上に必要となるでしょう。システム内製化への取り組みとアジャイル開発は、今後の市場の変化にも迅速に対応できる手法で、その推進役として Claris FileMaker のように世界的なローコード開発プラットフォームの全社的採用が、企業の将来を大きく左右することになるでしょう。

ローコードで DX を加速すべき理由は、こちらの IDC Japan が制作したレポートでも解説しています。

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