ローコード

ローコード開発のプラットフォームを選ぶときのポイント7選

ローコード開発は、あらかじめ用意されたパーツを組み合わせることで、可能な限りプログラミングのコードを書く作業を減らす開発手法です。ローコード開発を気軽に始められるプラットフォームはすでに多数登場しています。製品ごとに特徴が異なるうえ、機能も限られているために拡張性に限界があるので、自社に合ったものを選ばなければ成果が上がりにくいだけでなく、やりたいことが実現できない恐れもあります。今回はローコード開発プラットフォームを選ぶときのポイントを解説します。

ポイント 1.ローコード開発ツールを導入する目的を明確にする

ローコード開発ツールを導入する際は、目的を明確にしてから選びましょう。

ローコード開発ツールを導入しても、目的が明確になっていなければ課題が解決できない可能性があります。ツールごとに特徴が異なるため、自社の課題を解決できる機能が実装されているかどうかが重要になります。

1 つの失敗事例をご紹介します。

ある会員管理システムを汎用機で動かしている T 社では、これまで入会の仕組みや上級会員への変更手続きを紙で処理しており、会員管理部門で電子化を目的にアプリ開発プロジェクトが立ち上がりました。目的は、既に導入している iPad を活用した”ペーパーレス化”と管理部門や外回りの営業担当者の”業務効率化”です。

T 社の現場担当者は 3 つのローコードツールの中から自分たちが一番使いやすい機能を有するツールとして Claris FileMaker を選択しました。ところが、将来的にユーザ数が拡大し数百人の利用を見込んでいたため、ライセンス費用が 少しでも安いクラウド型のブラウザで動作するツールを使うように役員から命令され、Web ブラウザ上でのみ機能するローコードツールに変更して開発がスタートしました。

システム構築が終わり、いざアプリを使い始めると、ブラウザの長いスクロール。写真の取り込みに必要な複数回のクリック。本来であれば条件によって一斉置換されるはずだった置換機能がない。などと、機能の拡張性がないことが判明し、完全ペーパーレス化は実現したものの、業務効率化とはいえないアプリが完成してしまいました。

T 社の現場担当者は目的を文書化し明確にしていました。しかし、役員が読んだときには、”ペーパーレス化”、”業務効率化”、という文字が注視され、定量的な数値目標達成は最優先事項として考慮されていなかったのです。

iPad からワンクリックでカメラが起動し身分証明書を撮影。AI 連携して必要なフィールドに自動入力することで入力時間を 1 件あたり 5 分、月間 200 時間短縮、営業担当者の売上集計から給与インセンティブ計算までを自動化し、月間 80 時間の労務時間削減。など、Claris FileMaker で実現できたはずの具体的な数値が目的として明確になっていなかったために、直接的なライセンス費用というコストカット重視の役員のコメントで遠回りし、時間とコストを無駄にしてしまった事例です。

ポイント 2.コミュニティが活発な開発プラットフォームを選ぶ

できるだけコミュニティが活発な開発プラットフォームを選びましょう。それは、ユーザ同士の情報交換によってナレッジが蓄積されるからです。ユーザ数が多く、コミュニティが活発なほど、操作方法や活用法などの情報が豊富に存在し、生産性の向上が期待できます。

コミュニティサイトは、ユーザ登録をすれば誰でも自由に閲覧・投稿・コメントできる Q&A サイトです。独自コミュニティを持つプラットフォームは、日々の議論が活発に行われているのでその分ナレッジも蓄積されていきます。コミュニティサイト上で質問して返答があるのか? 質問から返答まではどれくらいの日数がかかっているのか? などを確認するのも、選定するためのポイントです。

ユーザ導入事例を検索する際には、決して同業他社の事例だけではなく、異業種の事例を見ることも重要です。イノベーションを生み出すためには、新しい知識や情報が不可欠です。実際、Claris 社の YouTube 事例ビデオには、全く異業種である日本航空のパイロットが作ったアプリの事例や、信州ハムの導入事例などがあり、それらは大変参考になることでしょう。

ポイント 3.プラットフォームのセキュリティ対策に注意する

近年、サイバー攻撃の手口は巧妙化しており、ローコード開発プラットフォームを利用するときも、悪質な攻撃者からデータを保護しなければなりません。

セキュリティ対策が万全かどうかはツール選定の重要なポイントだ

意外に思われるかもしれませんが、ツールを提供している企業の歴史や、ファイナンス情報も有用な選定理由となります。開発体制や運用体制、セキュリティ対策など親会社を含めてチェックすることを推奨します。また、過去の脆弱性対策情報は IPA の情報セキュリティサイトに公開されていますので併せて参考にしてください。

特にクラウドサービスにおいてはセキュリティが気になる方もいるはずです。その場合は、国際規格の ISO/IEC 27001 規格にも着目してください。

Claris FileMaker Cloud および Claris Connect は、外部からの攻撃を受け付けない堅固な環境のもとに運用されており、情報セキュリティに不安がある組織でも、世界最高クラスのプラットフォームで、初心者でもセキュリティの高いアプリを構築できるでしょう。

参考:https://support.apple.com/ja-jp/guide/sccc/sccc4d2c0468b/web

ポイント 4.アプリを動作させるデバイスや自社の環境に応じた製品を選ぶ

アプリを動作させるデバイスや、自社の利用環境に対応したローコード開発プラットフォームを選ぶことも大切です。重要な基準をいくつかご紹介します。

デスクトップ型・タブレット型・モバイル型

アプリケーションを生成できても、利用するデバイスで動作しなければ使われないシステムになります。マルチデバイスと複数 OS に対応したローコード開発プラットフォームを選びましょう。

マルチデバイス対応のプラットフォームであれば、iOS 、macOS 、WindowsOS 、Web アプリケーションを生成できます。そのほか、Safari 、Chrome 、Microsoft Edge 、Edge Chromium など複数のブラウザをサポートしているかも確認しましょう。

Claris FileMaker はマルチプラットフォーム対応で、 iOS 、macOS 、WindowsOS、Web ブラウザでシームレスに使用できる

オンプレミス型・クラウド型・オフライン型

オンプレミス型は、自社環境や、プライベートクラウド環境で開発できるので、データを社外に出したくない場合におすすめです。クラウド型は、インターネット環境があれば場所を問わず開発でき、またアクセスできるためテレワークやハイブリッドワークと相性が良いです。

社内の基幹システムとデータ連携が必要なシステムの場合は、オンプレミスをサポートしているプラットフォームを選ぶ必要もあります。理想は、オンプレミスでもクラウドでも対応可能なハイブリッドプラットフォームを選ぶことでしょう。

エンドユーザの利用環境が、山間部、海上、海底、地下、航空機など電波が届かない場合の対応についても考慮する必要があるかもしれません。

コンテナ船やタンカー船から豪華客船まで、さまざまな船舶 700 隻以上を運航する日本郵船株式会社では鉄板に囲まれた機関室で安全チェックを行うのに iPad を活用しています。そして WiFi 電波も遮断する過酷な環境で利用しているのが、オンラインでもオフラインでもアプリを動かせる FileMaker Go です。この他にも日本の安全を守る組織の方々に iPad と FileMaker Go を活用いただいています。

日本郵船事例記事を読む

ポイント 5.素材が豊富に用意されているプラットフォームを選ぶ

開発用の素材が豊富なプラットフォームであれば、開発の負担を減らしやすくなります。

ゼロから作り始めるのではなく、サンプルファイルをダウンロードしてカスタマイズを加えることができれば時間の短縮にも繋がります。Claris FileMaker では、業種別のサンプルが無料で公開されています。

FileMaker なら電波の届かない環境でのオフライン利用も可能だ

すぐに使える無料のテンプレートを集めた Claris FileMaker 業種別サンプル App 集

また機能を拡張する際の素材も重要です。例えば、Claris FileMaker では、「カレンダー」というアドオン素材を使えば、ドラッグ&ドロップでカレンダーが作成可能です。また、「バーコードジェネレータ」という素材を使えば、バーコード生成画面も簡単に作成できます。

ローコードではなくなりますが、プロ開発者も評価する Claris FileMaker は、JavaScript とも高い親和性を持っており JavaScript ライブラリを利用できるほか、自由なコーディングができるため、その拡張性に限界がありません。

開発画面を作成するときに時間がかかるのがデザインです。

Claris FileMaker では、あらかじめデフォルト設定されたアイコンやピクトグラムの他に、追加で利用可能な ファイルアイコン / ボタンアイコン を提供しているので直感的な GUI をエンドユーザに提供できます。

ローコード開発プラットフォームを選ぶときは、素材の内容まで比較しましょう。

ポイント6.サポート体制について調べる

ローコード開発は通常のプログラミングより難易度が低いですが、操作方法がわかりにくいというケースも珍しくありません。ツールを提供する企業がどこまでのサポートをしてくれるのか把握しておくことが重要です。

例えば、操作画面や設定方法を簡単に調べられるように、ヘルプ、マニュアル、サポートサイトを用意しているサービスがあります。導入後の使い方に不安がある方は、マニュアルや解説テキストの有無をチェックしておきましょう。また、マニュアルがあっても理解しにくいこともあります。その場合は YouTube などで検索し、解説動画の有無まで確認しておくと安心です。

さらに、組織内で本格的にアプリ内製化に着手したい場合には、トレーニングサービスの有無を確認したほうがよいでしょう。メーカー提供のトレーニングや、e-Learning で基礎を学習し、認定パートナーの個別トレーニングを受けることで DX 人材の育成も可能です。

初めてローコード開発ツールを利用する方は、無料のトレーニングや体験セミナーなどに参加し、どのようなサービスを選べばよいのか、気軽に相談してみることをおすすめします。

Claris FileMaker では、「FileMaker の自習室」という YouTube チャンネルを解説しています。

また、FileMaker の公式トレーニング教材「Claris FileMaker ガイドブック」も無料でダウンロードできます。

Claris FileMaker ガイドブックは PDF 版を無料でダウンロード可能

ポイント7.機能の進化が継続しているプラットフォームを選択する

ローコードプラットフォームには、機能がシンプルで低価格のツールが多いのですが、開発の途中で必要な機能が足りずに、プロジェクト遂行の妨げになる可能性や、開発したアプリが将来陳腐化する可能性もあります。また先述した例のようにペーパーレス化が目的になり、効率性の追求や DX の実現に至らない可能性もあります。

現在の潮流では、プラットフォームのオープン化により API で連携するサービスが増えていきます。Claris は API 連携する Claris Connect など、さまざまなアプリケーションとの統合や自動化を促進しています。こうした機能の拡張などは Claris プラットフォームを利用している世界 100 万を超えるエンジニアとコミュニティメンバーの意見を製品やサービスに反映しながらプラットフォームを進化させています。OS やセキュリティのアップデートが頻繁に行われる現在、プラットフォームを継続的に進化させることができるローコード開発プラットフォームを選ぶとよいでしょう。

まとめ

ローコード開発ツールには様々な製品がありますが、選び方を知っておけば自社に適した製品が浮かび上がってきます。今回紹介した選び方を参考にして、自社に適したローコード開発プラットフォームを探してみましょう。