目次
- FileMaker 導入の目的は「会員情報管理の効率化」を図るため
- 業務効率の向上はもちろん、サービスレベルの向上にも大いに貢献!
- FileMaker の柔軟性と堅牢(ろう)性を後ろ盾に新規事業を開拓
1. FileMaker 導入の目的は「会員情報管理の効率化」を図るため
株式会社スポーツフィールドは、大学の体育学部や体育会系クラブに所属する学生の新卒採用、スポーツ経験者やセカンドキャリアを求めるアスリートの就職支援サービスを全国規模で展開する人材紹介会社。具体的には、転職サイトの運営や年間 300 件以上にもなる新卒学生向けの就職イベントの開催などを行っており、体育会系人財に特化した人材紹介会社としては最大手だという。
そんな同社は Claris FileMaker を活用しさまざまな業務の効率化に成功してきたが、2011 年に FileMaker を導入する前までは、ある課題を抱えていた。当時関西エリアの営業部門を統括していた森本 翔太 氏(現 同社 専務取締役 ICT 開発本部長)は次のように振り返る。
「現在は約 300 名の社員を抱える当社も、当時はまだ社員が 10 名ほどの規模でした。そのような状態でしたので、新卒学生や転職者の会員情報の管理に忙殺されていたのです。例えば、新卒学生向けの就職支援サイト『スポナビ』の会員情報は日々、登録・更新を行っていますが、その情報は営業担当者で手分けして表計算シートに入力・管理をしていました。そのため、手間がかかるだけでなく、入力データの表記ゆれもあって、集計するにもひと苦労だったのです」
またビジネスを拡大するにしても、業務効率化を図るのはもちろん、データの積極的な活用が求められるのは言うまでもない。そのような環境を整備することも視野に入れて、森本氏は FileMaker の導入に踏み切った。
2. 業務効率の向上はもちろん、サービスレベルの向上にも大いに貢献!
「FileMaker の導入に踏み切った」といっても、はじめは森本氏が個人で行ったことだったという。
「まずは自分で試してみようという感覚で、トライアル版を使ってシステムを構築しました。いちばん初めに構築したのは、新卒学生の会員情報管理システムでした。『スポナビ』に登録された情報を FileMaker に反映されるようにして、リアルタイムな状況が把握できるようになりました。はじめは私が担当していた関西エリアのチーム内で使っていたのですが、便利なものがあると聞きつけた別の部署でも利用されるように。そして、全社で使われるようになったのです」
なお当時の森本氏は、システム構築未経験者。それでも思った通りのシステムが構築できたのは「ローコード開発可能な FileMaker だったから」だと振り返る。
その後、社内からの要望に応えるように数々の追加開発が行われ、システムの姿は当時とは大きく変わっている。現在では、事業の拡大や多様なニーズに対応するために自社採用したシステムエンジニアの手により、新卒学生の会員情報管理システムは Ruby で開発されたものになっているとのことだ。
ただ Ruby でのシステム開発に移行したからといって、FileMaker が利用されるシーンがなくなったわけではない。
同社では業務効率化のためさままざな SaaS を利用しており、それらを連携させるハブとして活用しているという。
例えば、同社にとっての直接の顧客である求人企業の情報を、名刺情報共有アプリから FileMaker のデータベースが取得する仕組みを構築した。 FileMaker のカスタム App 上で見積書作成ボタンを押すと、API 連携させたドキュメント作成アプリにデータが表示され、見積書が作成されるというフローを実現しているのだ。さらに、ワークフローアプリとも API 連携させ、見積書作成にまつわる申請や承認フローのデジタル化も実現した。
また社内向けのサービスも同様の仕組みで自動化されている。例えば、有給休暇が申請されると、社内向けのスケジュール共有アプリに自動的に反映されたり、社員同士の誕生日祝福制度をスムーズに実施するために FileMaker を介して、人事管理システムと社内用のメッセージアプリと連携させたりという具合だ。
その他にも、年 300 回以上開催される就職イベントでの参加者のチェックインを FileMaker でデジタル化。各就職支援サイトのマイページで QR コードを発行し、現地で QR コードを読み込むという仕組みだが、QR コードの読み取りアプリも FileMaker で作成している。
「この仕組みの効果は非常に大きいです。以前は紙の参加者名簿に手で記入してもらってチェックインしていたので、記入台の前に行列ができることもしばしばでしたが、今はそのようなこともなくなりました。また、来場者数やどの学生がどの企業ブースを訪問したかという情報もリアルタイムで把握できるようになり、当日のオペレーションの最適化も実現できています」と森本氏は胸を張る。
3. FileMaker の柔軟性と堅牢(ろう)性を後ろ盾に新規事業を開拓
さて、当初はシステムエンジニアが在籍せず森本氏が自らシステム構築を行っていた同社も、現在では 11 名のシステムエンジニアを抱えるようになった。システムエンジニアとして採用する人財は未経験者がほとんどとのことだが、 FileMaker はその新入社員の教育において役に立っているようだ。
システムエンジニアとして入社した社員は、まず Claris が公開しているチュートリアル動画で FileMaker についての理解を深めた後、自分で簡単なアプリを開発するのが同社の習わしだ。ローコードで開発できる開発環境が、システム構築のイロハを学ぶのにうってつけなのである。
入社したばかりの新入社員が構築したものは、社内向けの社員情報共有アプリや日報アプリ、自社オフィス受付用のデジタルサイネージにメッセージを表示するアプリなどがあり、同社の業務のさまざまなシーンで実際に活用されている。
「短期的には FileMaker の機能をさらに活用して、社員の残業時間削減や会議室の予約システムの高度化など、身近な課題を 1 つひとつ改善していきたいですね。そのために認証や機械学習などの AI 技術の活用も視野に入れています。長期的な観点でいうと、今後人材紹介サービスに限らず、スポーツに関連した新しいサービスを展開する予定ですが、新規事業を進めるにはスピードが求められます。迅速な改善や意思決定を行う上で FileMaker は大いに役立つので、そのようなところにも積極的に活用していきたいと思います」
FileMaker の活用に関する展望について、森本氏はこのように説明する。これからも、企業の成長を促すツールとして、FileMaker が果たす役割は大きなものになりそうだ。
【編集後記】
森本氏から始まったスポーツフィールドのデジタル活用の取り組みは、常に能動的である。それはシステム構築活動だけに留まらない。システムをより使いやすく価値あるものにするため、現場の声を開発に生かし続けているのだ。例えば現場の声を収集するために、各アプリに「問い合わせボタン」を設けたり、現場と開発部門で意見交換を行う会議体を設けたりしている。また、開発したシステムの現場定着を図るため、現場とシステムエンジニア間の橋渡しを行う「デジタル推進・サポート室」を設けるなどの工夫も。
このような取り組みを称賛する言葉に森本氏は「当社自体、体育会系で熱い想いを持つ社員が多く、社内に自然と人に向き合う姿勢が醸成されているからかもしれませんね」と笑うが、多忙を極めるなかでそのようなマインドを保ち続けることは言うほど簡単なことではないだろう。
いずれにせよ、システム導入の成功は、システムがユーザにどれだけ寄り添えるのかにかかっているところが大きい——。そんなことを改めて認識させてくれるインタビューとなった。
*QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。