事例

12 年一貫の教育プログラムを一元管理する取り組み

国府台女子学院(千葉県市川市)は 1926 年(大正15年)の創立以来、仏教を礎にした女子教育を実践し、延べ 2 万人以上の卒業生を社会に送り出している伝統ある女子校で、小学部、中学部、高等部がある。この12 学年のすべてで、学籍や成績などのデータの管理に情報セキュリティに配慮したFileMaker プラットフォームで構築された校務支援システム「スクールマスターZeus」を採用し、教職員の負担を軽減した。

以前は小学部と中学部・高等部で分断されたシステムを使用していた

国府台女子学院では、スクールマスター導入以前は、同学院で独自に開発したシステムを使用していた。小学部は Microsoft Excel、中学部・高等部は SQL サーバーとMicrosoft Access を利用して開発されたもので、別々のシステムだった。そして両方に共通だったのは、少数の教職員にシステム開発やサポート業務が集中していたことだった。

システム開発を担いサポートもしていた、SE 経験のある教務事務の落合敏男氏への負荷が多く、小学部の福本博之副教頭は「システム面で教員をサポートする業務が1人に集中していて大きな負担を掛けていることが課題でした」と以前の状況を振り返る。

中学部・高等部にはデータベースのクエリを扱うことのできる教員が数人いて、落合氏が構築したシステムに関する担当者として他の教員からの問い合わせやデータ出力依頼などの要望に個別対応していた。その担当者の一人が高等部の松山諒教諭だ。スクールマスターの導入後は要望にその都度対応することがなくなったので、松山教諭は「システム担当者としての日常の負担は減りました」と言う。

同校では校舎を入って正面に図書室を配置。木が多く使われた明るい校舎で12学年の児童・生徒が学校生活を送っている

スクールマスターで教職員の業務負荷を軽減

国府台女子学院では、現在、小学部、中学部、高等部の約 180 人の教職員がウェルダンシステム株式会社(https://welldone.co.jp)が提供する「スクールマスターZeus」(以下、スクールマスター)を使用し、学籍、成績、入学試験のデータを管理している。学籍と成績に関しては 2017 年4 月から、入試に関しては2018 年度入学の受験生から順次導入された。

スクールマスターは、開発・販売をしているウェルダンシステム株式会社がそれぞれの学校に合わせて生徒証や在学証明書、卒業証明書の発行など必要な帳票類をヒアリングし、実装した上で納入されるが、運用しているうちに、こういうデータを見たい、こんな帳票がほしいといった要望は当然出てくる。これについては FileMakerプラットフォームを採用していることにより、ウェルダンシステムと連携して導入後にも短期間でカスタマイズすることができ、必要な帳票類を毎年追加している。

国府台女子学院 小学部 福本博之副教頭

教諭がお互いにサポートしたり使い方を発見したりしながらスクールマスターへ移行した

中学と高校で異なっていた入試のシステムも統一

小中高の一貫校で全体のデータを一元管理している同学院にとってメリットが特に現れているのが、入学試験関連の業務だ。入学試験では、Web 出願のデータをスクールマスターにインポートし、試験実施後に各教科担当の教諭が得点を入力する。これを自動集計して判定会議で合否を決定する。

以前は、中学部の入試では Microsoft Access ベースのシステム、高等部の入試では Microsoft Excel と、別々のデータ管理をしていた。中学部と高等部の教諭は両方の入試に携わるため、両方のデータ管理方法を把握しておく必要があった。スクールマスターの導入後は「同じシステムにまとまったので、操作が共通で簡便になりました」(松山教諭)という。

中学部、高等部には、それぞれ内部進学生と外部受験生がいる。内部進学者のデータはそのまま引き継ぐことができ、移行の手間もかからない。また成績データもスクールマスターに集約されているため、内部進学生と外部受験生が混在する新年度のクラス編成にも役立てられている。従来の分散されたシステムからの移行により、同学院の Web 出願から入試、合否判定、クラス編成などに有効に活用され、効率化を超えた新しい価値の創造を実現している。

国府台女子学院 高等部 松山諒教諭

12 学年分の児童・生徒データがすべてそろえばさらに効果が現れる

同学院には皆勤賞の表彰がある。それも、小学部の6 年間、中学部の 3 年間、高等部の 3 年間に加え、小中の9 年間、中高の 6 年間、小中高の 12 年間と、表彰の対象が多岐にわたる。児童・生徒にとって、とても励みになる表彰なので、「出欠を間違いなく、スムーズに集計できるのは、12 学年分が一元管理されているメリットですね」と落合氏は言う。

落合氏は「学籍や成績のデータが小中高の全学年分そろえば、さらに詳しいデータ分析が可能になり活用の幅が広がる」と言う。松山教諭は「中学部と高等部ではすでに一部の学年の生徒に iPad が導入され、近々、全学年で使うようになるので、それら学習データとの連携も考えられますね」と FileMaker プラットフォームの拡張性を語る。

12 学年分のデータがまとまり、生徒がiPad を使うようになるといった状況の変化に応じてスクールマスターはさらに進化し、国府台女子学院の校務運営を効率化し、児童・生徒の学校生活をより良いものへ変革する原動力になるだろう。

国府台女子学院 教務事務 落合敏男氏(写真中央)

国府台女子学院(学校法人平田学園)

所在地:千葉県市川市菅野3-24-1

業種:学校

概要:国府台女子学院では、小学部、中学部、高等部の12 学年分の児童・生徒データを、FileMaker プラットフォームベースの校務支援システム「スクールマスター」で管理している。学籍と成績のデータのほか、入学試験や事務での各種証明書発行にもスクールマスターが利用されている。導入により、一部の教職員に集中していた負担の削減、中学部と高等部での入試関連業務の一元化などの効果がすでに得られており、今後12 学年分のすべてのデータがそろえばさらに活用されると見込まれている。

導入成果

  • 内製のシステムからスクールマスターに移行したことで、システム開発やサポートに携わる教職員の負担が減った。
  • 中学部と高等部で異なっていた入試用の内製システムもスクールマスターに統合された。教諭は両方の入試に関わるため、使いやすくなった。
  • 中学部・高等部の内部進学生と外部受験生の成績データも一元管理され、クラス編成などに役立つ。
  • 小中高を通じた出欠の管理と集計が容易になった。